“一人ひとりに向き合う姿勢”が入社の決め手に
2013年に新卒入社し、今年で13年目を迎える能重新。関東のホテルからキャリアをスタートさせ、現在は岐阜県にある『長良川清流ホテル』でホテル部門のユニットマネージャーを務めている。今やPDPを率いる一員となった能重だが、学生時代は学業の傍ら、アルバイトに全力をそそぐ日々を過ごしてきた。
「当時はホームセンターの園芸部門で、造園に関するアルバイトに従事していました。触れ合ううちに植物への興味がどんどん深まっていき、切り花を扱うお店でも掛け持ちで働くようになって。“将来は花を使って、何か面白いことや楽しいことがしたい” という想いが、次第に膨らんでいきました」。
日々花の魅力に触れるなか、就職活動がスタートした。自分の価値観に合う企業探しに奔走していたある日、友人から「花を扱っていて面白そうな会社があるから、一緒に説明会へ行ってみない?」と誘いを受けた。これが、能重とPDPの出会いだった。
しかし、いざ説明会に足を運ぶと、会場の参加者は女性ばかり。当時のブライダルに特化した説明内容も相まって、「場違いなところに来てしまったかもしれない」と気後れした。それでも花への想いを諦められなかった能重は、思い切って会場にいた社員に声をかけた。
「花に興味がある自分は、選考を受けられないんでしょうか?」
その問いに対して返ってきたのは、「もちろんチャンスはあります」という心強い言葉。この一言が能重の背中を押し、選考へ進む決意を固めさせた。
「当時、PDPのパンフレットにはフラワー部門のマネージャーが全身写真で掲載されていました。写真越しでも分かる熱量とあまりの格好良さに、“自分もいつかこうなりたい”と一気に心を奪われたのを覚えています」。
経済学部出身だった能重は、金融機関も視野に入れて就職活動を行った。また、小売りのアルバイト経験を活かし、百貨店にも応募。実際にいくつかの内定も得ていたという。そんな数ある選択肢の中からPDPを選んだ決め手は、選考の中で唯一、親身な面談を設けてくれたことにあった。学生一人ひとりに真摯に向き合おうとする企業の姿勢に、深く感銘を受けた。
「当時の僕は早く出世して稼ぎ頭になりたかったので、成長スピードが速く、若くても役職を目指せる環境を求めていました。PDPは僕の求める条件を満たしていたので、自分にとって最高のフィールドだと確信しました」。
パンフレットで見かけた憧れの背中を追いかけ、能重の挑戦が幕を開けた。
22歳の挫折。「頼る勇気」に辿り着いたあの日
入社後、最初に配属されたのは『SCAPES THE SUITE』のホテル部門だった。フロント対応をはじめ、施設の予約管理、客室の準備、お客さまのアテンドが主な業務だ。第一志望だったフラワー部門への配属は叶わなかったが、能重は置かれた場所で愚直に業務と向き合った。
SCAPESは客室がわずか4室のみの、隠れ家的なコンパクトデザインホテルだ。そのため訪れる客層も著名人が多く、スポーツ選手や芸能人、政治家と、錚々たるお客さまをもてなした。能重は「22歳の若造には刺激的な毎日でした。ドキドキ、ワクワクの連続です」と当時を振り返る。
しかし、現実は楽しいことだけではない。お客様とのコミュニケーションが思うようにいかず、空回りする日々が続いた。どうすればお客さまに心から喜んでもらえるのだろうか。自問自答するばかりで、答えは見つからない。状況はまさに“暗中模索”だった。
出口の見えない日々を送るなか、当時の上司から思わぬ指摘を受けた。
「未熟な自分が、一人きりの力で上達できるわけがないだろう。闇雲に何でも質問するのはよくないけれど、お客さまのためにベストを尽くしたいなら、分かる人に聞きなさい。そうしないといつまで経っても成長しないよ」。
能重はハッとした。自分一人で解決策が見つからないなら、誰かに助けを求めればいいのか。さらに、その話を別の上司に相談すると、新たなアドバイスが続いた。
「これまで、能重から報・連・相をもらったこと、ほとんどないよ。些細なことでもいいから、まずは報・連・相の練習から始めてみたら?」
入社して数か月、ようやく解決の糸口が見えた。それから1日10回以上の報・連・相を行う特訓の日々が始まった。例えば、お客様の装いや何気ない所作からお人柄を推察し、「どうすれば喜んでいただけるか」を上司と徹底的に議論した。こうした思考の積み重ねにより、次第にお客さまの想いを汲み取った対話ができるようになっていった。
さらなる成長を目指すなかで、能重はPDPの独自メソッドである「感動の技術化」と出会う。感動の技術化では、お客さまには4パターンのペルソナがあり、喜ばれる所作や動作、言葉遣いがあることを学んだ。この経験は、入社2年目にして婚礼のキャプテンという大役を任された際にも、大きな武器となった。
「婚礼業務は全くの未経験からスタートしました。若い自分が未熟な振る舞いをして、一生に一度の舞台を控えた新郎新婦様を不安にさせてはいけない。その一心で、ホテル業務で培ったコミュニケーション術を総動員し、とにかく安心感を持っていただけるよう全力を尽くしました」。
未熟だからこそ、誰かの力を借りる勇気を持つ。そのシンプルな気づきが、彼のキャリアを大きく変えていった。
すべてはお客さまの笑顔のために
現在、能重が所属している『長良川清流ホテル』は、PDPと資本・業務提携を結んでいるホテルマネージメントインターナショナル株式会社(以下HMI)が所有するホテルだ。そのため現場にはPDPメンバーだけでなく、長年同ホテルを支えてきたHMIの社員も共に在籍している。
文化の異なるふたつの企業が協働している環境で、能重は新たな知見と出会うことになる。PDPには挑戦を称える社風があり、失敗を恐れず突き進むアグレッシブな気質がある。一方でHMIが持つ強みは「堅実な経営」と、確実性を重んじるコンサバティブな姿勢だ。
「HMIの姿勢を通じて、緻密な戦略を練り上げることの重要性を痛感しました。これまでの自分たちに欠けていたのは、挑戦の結果に対する“真摯な振り返り”です。次の企画でいかに失敗を排除するかを徹底的に追及するHMIの思考プロセスを学び、プロとしての基準が大きく変わりました」。
配属当初こそ「どう連携していくべきか」と悩むこともあったが、「お客さまを喜ばせたい。笑顔を見たい」というゴールは両者とも同じ。共通の想いのもとで手を取り合い、PDPの直営店舗だけでは決して学べなかった貴重なナレッジを積み重ね、能重は大きく成長した。
長良川清流ホテルの客室数は40室。かつて能重が経験した4室のみのSCAPESとは規模も異なれば、訪れる客層もファミリーからシニア層まで多岐にわたる。しかし、かつて叩き込んだ“お客さまの思考を分析し、理解する術“は、環境が変わった今も彼の確固たる指針となっている。
「1階にあるフロントは、お客さまとの貴重な接点の場です。例えばご家族連れであれば、特定の一人ではなく全員に声を掛けます。その些細な返答の端々に、ご家族の価値観が表れるからです。お子さまの話に花が咲くなら、この旅の主役はお子さま。そんな心の機微を察知することが、期待を超えるおもてなしの第一歩になります」。
ご高齢のお客さまには段差の昇降をサポートしたり、エレベーターのボタンを押してエスコートしたりするなど、「些細な気配り」を率先して続けた。次第にホテルへの評価も高くなり、旅行予約サイトのクチコミは4.0から4.6まで上昇。エリア内の検索順位も8位から2位まで登りつめ、ホテルの売上へと直結する圧倒的な成果を叩き出した。
小さな気づきを積み重ね、一人ひとりのお客さまと寄り添う。フロントという情報収集の起点に、彼は揺るぎない信念を持って立ち続ける。
令和だからこそ、自分の足で“リアル”を掴め
能重は、13年間の歩みをこう振り返る。
「一口にサービス業と言っても、PDPの業務は多岐に亘ります。これまでホテルやレストランだけでなく、新卒採用のリクルーターやメンター、アセッサーなど、人財開発室の業務も経験させてもらいました。常に変化があるので飽きることがないですし、何より『やりたい』と手を挙げたことに率先して挑戦させてもらえる環境が整っています」。
これまで多くの学生と接する中で、時代の移り変わりを肌で実感してきた能重。オンラインでの面接やリモートでのコミュニケーションが当たり前になった令和の今だからこそ、あえて「対面でのコミュニケーション」の重要性を説く。情報があふれる現代に大切なのは、リアルな体験だ。
「ネットにある情報と実態は異なります。面談をしていると、指導者と深い自己分析を行っている学生や、OB・OG訪問で生の情報を集めた学生は、軸がしっかりと定まっている印象があります。自分の目で見て、直接話を聞く。すると“私はこうなりたい”という意思が腹落ちし、本当の意味で自分の言葉で語れるようになるんです」。
かつての自分を重ね合わせ、学生に寄り添う能重。PDPの強みである「人財」の魅力を、彼は誰よりも確信している。ここまで歩みを止めずに続けてこられた理由を問うと、「いい人に恵まれましたから」と、感謝を込めた笑顔で語った。
まだまだ能重の挑戦は続いていく。
「数々の取り組みが功を成し、当ホテルは地元の皆さまからこれまで以上に愛される場所へと生まれ変わりました。今後はその輪を広げ、関東・関西・北陸地方での認知拡大にも力を入れていきたいです。おもてなしに磨きをかけ、“長良川清流ホテルって良いらしいよ”という評判が全国に届くよう精進してまいります」。
友人の「面白そうな会社がある」という一言から始まった、PDPとの出会い。今やチームを率いるリーダーとなった能重は、あの日見たパンフレットの背中と肩を並べている。美しい長良川のほとりで、今日もお客さまの心に寄り添う能重の眼差しには、優しく、そして強い情熱が宿っている。